東村アキコさんの、かくかくしかじか、感想。
自分の血肉になってしまうくらいに、本質に近いものとの出会いですら、時には魂の目指す場所と矛盾してしまうことがある。
東村アキコさんの「かくかくしかじか」は、作者本人の、絵についての人生を切り取ったお話だと思う。
マンガをずっと描きたかった作者が、宮崎県の畑の真ん中の日本家屋で、美術を教えるおっさん(先生)と出会って、惹かれながら追いかけながら、それでもマンガに幾度となく引き戻される。それの繰り返しで、少しずつ進んでいく。
美術としての絵、マンガとしての画との狭間。
矛盾するものも少し融合する方法くらいはこの世にあるだろうし、大人になれば折り合いの付け方もわかるはず。
けれど、それがうまくいかなくたって、むしろうまくいかなかったりする様にこそ、儚さや美しさを感じるのだと思う。
矛盾を折り合わせるのではなく、美しさに昇華させることこそ、一つの色で。
それには時間が必要だけれども、その分、人の心を震わせるのだ。